海に入る

 子供の頃、リーフの間の抜けた水深3m程を海遊していると突如後ろから首元を通り過ぎていった大きなコブダイ。台風前日の10fの波に飲まれ激流に掻き回され、30秒くらい海の底から這い上がれなくて少し危ないと思った日。 家から歩いてすぐの県立高校が海に近いという理由で、2012年定員割れした。それは新しく身をもって実感したことのない海への恐れを私に植え付け、そして徐々に大きく実らせていった。波という自然エネルギーを恩恵として授かる私は、海と波に対して複雑で抽象的な気持ちを抱いた。海を愛し恐れた私は、身辺の変わり行くローカライズや風土の物語を絵に残すことにした。


 効率よく海に入るために板を持ってパドルして沖にでる。その延長線上にサーフィンがあるだけで、重要なことは海に入るってだけのこと。魚が吐いた粘液でできた泡沫を手ではたいたり、浮いてる細い竹の棒を拾って吹いてみたら高い音が鳴るから、そのせいぜいな単音で波寄せしてみたり。波間では第一世代のおじいちゃんもみんな子供に戻る。波を横取りされて怒鳴るし、乗り過ごした人と目が合って笑い合う。オレンジを岸に向かって投げる。肉体も精神も解放し、伝達する波が全てと繋がっているということを想起させてくれる。順応する準備を設える。

2018.5


© KEITO HARADA