睡眠について

 時々、週に2,3回のペースで長時間睡眠をしてしまう。15時間くらいのときもあれば、今までの最長では24時間ぶっ続けで寝てしまったこともある。一度も眼を覚ますこともなく寝てしまう。しかし、朝起こしに来た母が「起きなさい」「うるせー」と会話をしていると言う。自分には全くそんな記憶はない、もしかしたら二度寝して起きるまでの間に一部の記憶を失っているのかもしれない。24時間近く寝てしまうと、寝た時間と起きた時間がほぼ一緒なので、例えば0:00に寝たとして23:30に起きたとする。あれ、ちょっと過去に戻ってね?俺タイムリープしてね?、となったりする。

よく寝てしまうことは家のみならず、電車を待っている時など、「いま原田くん寝てたよ」などと言われたりする。日中も眠いことがしばしばで、気づかぬうちに立ち寝をしている。

こんな調子なので生活のリズムはバラバラで、人付き合いや仕事に支障をきたすので、病院に行った。

まず初めに行ったのが馴染みの総合病院の総合内科だった気がする。そこは2,3回くらいしか通えなかったのだが、というのも自分の過眠という症状に専門的でないし(睡眠の症状だとどこの病院もあってもSAS(睡眠時無呼吸症候群)の専門科しかない)、次の来院までに起床と就寝の時刻をメモして来てね~と言われ、来院の当日に長時間睡眠してしまい行けなくてそのままドタキャンしてしまった。初診から処方箋もなかったのでそうなるのも必然的であった。

次は精神的な理由もあるのかと、近くの精神病院に通った。そこは初診から処方箋もでて、生活のバランスが整っていく感じがした。先生の接し方も優しくいいほうではあったが、やはり根本的な解決にはならず、睡眠専門の病院を紹介してもらって通院はやめた。

紹介状を書いてもらった病院は片道1時間はかかるものの、なんだか院長がテレビに出てたりして有名らしかった。そのせいか初診の予約は2ヶ月後と大変取りにくかった。そして初診翌日になって場所を確認しにグーグルマップを覗いた。レビューをみたら評価が頗る低く、悪評も散見され忽ちに不安になり、行くのをやめてぐっすりと寝た。

それからはとくに病院には行かず、長い睡眠と暮らしている。


寝たいけどまだ寝れない時、集中力がない性かじっとしていられないので、20cm程の尖った鹿の角の先を握ったり撫でたり匂いを嗅いだりする。自然と落ち着きいつしか微睡む。侍が刀を、スナイパーがライフルを抱いて眠るように私は鹿の角を胸に眠る。

理想を言えば飼い猫のジェリーが上に乗ってきて、起こさないようにじっと耐えているうちに眠ったり、暖を取りに布団に入って来たところを湯たんぽ代わりに暖を取り返しているうちに眠りたい。生憎ジェリーは母にベッタリなので、あることがおきない限り無理そうだ。


なにをしても寝れない時はあって、眠気を携えたままではできることも少ないが、制作は夜にやるととてもスムースに作業が進む。日々のあれこれをやり終わって制作に集中できるとか、手感が冴えることが夜に多かったり、風呂に入ったりシャワーを浴びる時によくアイデアがでたり思案が纏まったりするのでその直後とか、兎角夜に制作をしてしまう。


夜型の生活はサーフィンと相性が悪く、季節や天候によって大きく変わるが 基本いい波は早朝から始まり、昼頃には汐の満ちと共に波は小さくなる。サーファーの朝が早いのは波のリズムに自らを合わせにいっているからだ。夜の制作が朝に終わりそのまま海へ入って昼前に戻って爆睡する。ということもままある。

都内や海から離れた友人と一緒に入る時などは、8時頃に来て、母が家に入れ、起こされ、俺が朝飯を食べる頃にはウェットに着替えていて、俺がウェットを着る頃には海に向かっている、、、とズレが生じたりする。

夜釣りをする時ならば、2時頃に連絡がきて、冷凍してあるイソメを常温解凍し、3時頃に竿を刺した単車が来て、スポットに行く途中のコンビニで即席味噌汁を買って、釣って、7時頃に帰って寝る。

と、夜に起きていればそれに即した行動もそれなりにあってよい。


森見登美彦の「夜行」という小説に登場する夜型生活の岸田道生という版画家の住宅兼アトリエは岸田サロンと称され、岸田を軸に夜中人が集まり、コーヒーを淹れ、会話をする。

そういうスタジオを構えられたらな、とも思う。


鹿の角を握っても眠れない夜中、この文を書いた。

2020.2.11

© KEITO HARADA